演技の話をするとき、「熱量」という言葉をよく使います。
でも、熱量というのは、声の大きさや身体の動きの大きさのことではないと思っています。
熱量は、感情の強さと大きさです。
笑う、怒る、といった外へ発散する感情は、熱量を上げると比較的分かりやすく大きな表現になります。
声が大きくなる。
身体が大きく動く。
表情も大きくなる。
こういう表現が得意な役者はたくさんいます。
一方で、泣く、悲しむ、といった内向的な感情になると、「弱くやればいい」と考えてしまう人がいます。
でも、それは違うと思います。
悲しい感情だからといって、感情そのものまで小さくする必要はありません。
むしろ、悲しみの熱量を思い切り高める。
ただし、その熱量を外へ発散させない。
強い感情を身体の内側へ引き込む。
そうすると、身体の内面から発している空気そのものが変わってきます。
発散型の感情 ↓ 熱量を上げる ↓ 外側へ大きく出る ↓ 笑う・怒るなどの表現になる
一方で、
内向型の感情 ↓ 熱量を上げる ↓ 感情を身体の内側へ強く引き込む ↓ 身体の内側から発する空気が変わる
ということができます。
だから、悲しい場面で静かにしているからといって、感情まで小さくする必要はありません。
小さく動くことと、感情が小さいことは別です。
むしろ、身体は静かなのに、内側にはものすごく大きな感情がある。
その状態を作ることができれば、声を張り上げたり、大きく動いたりしなくても、客席には強いものが伝わります。
そして、ここで「止める」という身体表現が生きてきます。
全身がきちんと止まっている。
その身体の中に、大きな悲しみがある。
だからこそ、ほんの少し視線が動く、呼吸が変わる、首が動く、表情が変わる。
そうした小さな変化に、大きな感情の熱量を乗せることができます。
「悲しい場面だから弱く演じる」のではありません。
悲しみの熱量を最大まで高め、その感情を外へ発散せず、強く内側へ引き込む。
これも役者の身体表現の一つだと思います。
感情の強さと、外から見える動きの大きさは同じではありません。
熱量が高いからといって、必ずしも大きく動く必要はない。
静かな身体の中に、ものすごく大きな感情を持つこともできる。
その違いを意識できるようになると、演技の幅はかなり広がるのではないでしょうか。
文責:チャッピー