HATAKITI 演劇の教科書|照明

第11章 照明プランを考える

台本と演出意図を読み取り、観客に何を見せるのかを考えながら、自分で照明プランを組み立ててみます。

導入 照明を「自分で設計する」

第10章では、一つの場面を題材にして、必要な光を一灯ずつ組み立てました。第11章では、そこから一歩進んで、台本を読んで自分で照明プランを考えてみます。

照明プランを考えるときに大切なのは、「どんな色にしたいか」から始めないことです。

台本を読む → 演出意図を理解する → 見せたいものを決める → 必要な光を考えるという順番で考えていきます。

11-1 まず台本を読む

照明プランの出発点は、照明図ではなく台本です。

まず、その場面がいつ・どこで・誰がいる場面なのかを読み取ります。

さらに、台本に直接「明るくする」「暗くする」と書いてなくても、照明で表現できることがあります。

台本から時間・場所・人物・行動を読み取り、照明のイメージにつなげる図
台本に書かれた情報から、照明で何を表現できるかを考えます。

11-2 演出から「何を見せたいか」を聞く

台本を読んだだけでは、照明の答えがすべて決まるわけではありません。

演出がその場面で観客に何を感じてほしいのかを確認します。

人物を見せたい

表情や身体、人物同士の関係を見せる。

空間を見せたい

舞台の広さや場所、奥行きを感じさせる。

感情を支えたい

緊張、孤独、安心などの印象を光で支える。

変化を見せたい

時間や場面、人物の状態の変化を光で強調する。

例えば「怖く見せたい」「人物の孤独を見せたい」「二人の距離を強調したい」といった演出意図を、照明でどう表現するかを考えます。

演出意図を照明の考え方に変換する流れを示す図
演出の言葉を、そのまま色に置き換えるのではなく、「どこを明るくするか」「どこを暗くするか」など照明の要素に変換します。

11-3 場面を分解する

一つの場面を、見せたい対象と場所に分けて考えます。

第10章で学んだように、舞台をいきなり全部照らすのではなく、必要なところから考えます。

例えば二人の人物が舞台中央と下手に離れて立っているなら、「二人をそれぞれ見せる光」と「二人がいる空間を見せる光」を分けて考えられます。

舞台上の人物・背景・小道具を場所ごとに分解して考える図
場面を「どこで・誰が・何をしているか」に分解すると、必要な照明を考えやすくなります。

11-4 必要な光を書き出す

「何を見せたいか」が決まったら、それを実現するために必要な光を考えます。

顔・表情

前明かりなど、顔が見える方向の光。

身体・動き

サイドなど、立体感や動きを支える光。

輪郭・奥行き

バックライトなど、背景から人物を分ける光。

空間・背景

トップやホリゾントなど、空間を支える光。

ここではまだ「この灯体を使う」と決めなくてもかまいません。まず必要な光の役割を整理します。

見せたいものから必要な光の役割を考える図
顔・身体・輪郭・背景など、何を見せたいかによって必要な光の種類と役割を考えます。

11-5 照明図に落とし込む

必要な光が決まったら、実際にどこから光を出すのかを決めます。

ここで第5章で学んだ照明図が役立ちます。

照明図は、単なる「灯体の配置図」ではありません。どんな光を、どこから、何のために出すのかを共有するための図面です。

見せたいものから照明図までを組み立てる流れを示す図
見せたいものを決め、必要な光を考え、灯体・位置・方向・色・明るさを決めて照明図に落とし込みます。

11-6 場面転換を考える

舞台では、一つの場面だけで公演が終わるわけではありません。

例えば、昼 → 夕方 → 夜のように時間が変わったり、普通の場面 → 緊張 → クライマックスのように場面の状態が変化したりします。

その変化を、照明の明るさ、色、方向、広がり、消す光や足す光によって表現します。

ここで登場するのがキューです。どの瞬間に、どの照明状態へ変化させるのかを整理しておきます。

昼・夕方・夜などの場面転換をキューとして整理する図
場面の変化に合わせて、いつ、どの照明状態へ変えるのかをキューとして整理します。

11-7 「全部点ける」から卒業する

照明は、光を足していけばよいわけではありません。

「暗いから明るくする」だけで考えると、舞台全体が均一に明るくなってしまいます。

そこで、この光は本当に必要か?と考えてみます。

必要な光を残し、不要な光を引くことも照明プランの大切な仕事です。

11-8 実際のプランを作ってみる

ここまでの考え方を使って、一つの短い場面を最後まで設計してみましょう。

課題「二人の距離」を照明で見せる

舞台中央に一人、下手側にもう一人の人物が立っています。二人は同じ舞台にいるものの、心理的な距離がある場面です。

  1. 台本から時間・場所・人物の位置を読み取る。
  2. 演出として何を見せたいのかを決める。
  3. 二人の顔や身体に必要な光を考える。
  4. 二人の間の空間をどこまで見せるか決める。
  5. 色や明るさの差を考える。
  6. 灯体・位置・方向を照明図にする。
  7. 場面の変化があるならキューを考える。

11-9 プランを実際に仕込んでみる

図面どおりに仕込んでも、実際に点灯すると想像と違うことがあります。

灯体の位置、角度、舞台の大きさ、反射する素材、客席からの見え方など、現場には図面だけでは分からない条件があります。

実際に点灯したら確認すること

  • 思った場所に光が当たっているか。
  • 光が広がりすぎていないか。
  • 必要な場所が暗くなっていないか。
  • 色が想像と違って見えないか。
  • 客席から見たときに意図した関係が見えるか。

問題があれば、灯体の位置、方向、絞り、色、明るさなどを調整します。

11-10 照明プランを完成させる

最後に、ここまでの流れを一つにつなげます。

  1. 台本を読む
  2. 演出意図を理解する
  3. 見せたいものを決める
  4. 必要な光を考える
  5. 灯体・位置・方向・色・明るさを決める
  6. 照明図を作る
  7. 仕込む
  8. 明かり合わせをする
  9. 客席から確認する
  10. 修正して完成させる

これが、照明を「設計する」ということです。

第11章まとめ

照明は、灯体を知っているだけでは設計できません。台本を読み、演出意図を理解し、観客に何を見せたいのかを考え、そのために必要な光を組み立てます。

台本 → 演出意図 → 見せたいもの → 必要な光 → 灯体・位置・方向・色・明るさ → 照明図 → 仕込み → 明かり合わせ → 客席から確認 → 修正

第1章からここまで学んできたことは、すべてこの流れにつながっています。

にゃかきち

台本を読んで、照明を考えるところまで来たにゃ!