HATAKITI 演劇の教科書|照明

第2章 灯体を知る

舞台照明で使われる代表的な灯体と、それぞれが得意とする光を学びます。

第2章 灯体を知る

舞台照明では、光を作るための器具を「灯体」と呼びます。灯体には、それぞれ得意な光があります。

広い範囲を照らすもの。狭い範囲を照らすもの。輪郭を作るもの。背景を照らすもの。形を切り取るもの。

だから、「一番明るい灯体を使えばいい」というわけではありません。

どんな光が必要なのかに合わせて、灯体を選ぶ。これが基本です。

2-1 凸(平凸)

舞台照明でよく使われる灯体の一つが、凸レンズを使ったスポットです。「凸」や「平凸」と呼ばれることがあります。

にゃかきち

なんで『凸』っていうの?

凸レンズの断面と形の由来を示す図
凸レンズは中央が厚く、外側に向かって薄くなる形をしています。

凸レンズは、光を集めたり、光の広がり方を調整したりするために使われます。凸系の灯体では、比較的しっかりした光を作ることができます。

そのため、人物や特定の場所を照らしたり、光の範囲を調整したりする用途で使われます。

2-2 フレネル

次にフレネルです。フレネルもレンズを使った灯体ですが、凸とは少し違った構造になっています。

にゃかきち

凸とフレネルって、どっちもレンズなのに何が違うの?

凸レンズとフレネルレンズの構造を比較する図
フレネルレンズは、レンズの働きを段階的な形状で実現した構造です。

舞台照明では、比較的柔らかな境界の光を作りながら、光の広がりを調整する用途などで使われます。

凸とフレネルは、どちらが「上」というものではありません。必要な光に応じて使い分けるものです。

2-3 PAR

PARは、レンズや反射鏡などを利用して、特徴のある方向性を持った光を作るタイプの灯体です。

にゃかきち

PARって、普通のスポットと違うの?

PAR灯体と方向性のある光を示す図
PARでは、機種や配光によって光の広がり方が変わります。実際の仕様を確認して使います。

PARは、空間に方向性のある光を作ったり、複数台を組み合わせたりする用途があります。

ここでも大切なのは、「PARだから何でもできる」ではなく、「PARが得意な光を利用する」という考え方です。

2-4 エリスポット

エリスポットは、光の形や範囲を比較的細かくコントロールできるタイプの灯体です。

特定の人物、特定の場所、特定の範囲を狙って照らしたいときに活躍します。

にゃかきち

この灯体だけ、光の形まで作れるの?

レンズによる光に、カッターやゴボなどを組み合わせることで、光の形そのものを設計できます。カッターについては後の章で詳しく扱います。

2-5 ホリゾントライト

舞台の奥にある壁や幕など、背景を広く照らすために使われるのがホリゾントライトです。

にゃかきち

人物を照らすライトとは違って、背景を照らすライトもあるんだ?

ホリゾントライトで舞台奥の背景を照らす断面図
ホリゾント系の灯体は、舞台奥の背景面を広く照らすために使われます。

人物だけを照らしても、背景が真っ暗なら舞台全体の印象は大きく変わります。背景を一つの面として作ることで、舞台空間の印象を整えることができます。

2-6 LED灯体

最近の舞台照明では、LEDを光源として使う灯体も多くなっています。

LED灯体には、白色光を出すものもあれば、赤・緑・青などを組み合わせて色を作るものもあります。さらに、明るさや色などを電子的に制御できるものもあります。

にゃかきち

じゃあ、LEDならゼラを入れなくても色を変えられるの?

灯体によります。LEDの光源そのものの組み合わせで色を作れる器具もあります。一方で、従来型の灯体ではカラーフィルターを使って光の色を変えることがあります。

「LED=ゼラが絶対にいらない」という単純な話ではありません。灯体の種類や使い方によって、色の作り方は変わります。

舞台照明の代表的な灯体と、それぞれの得意な光をまとめた図
灯体にはそれぞれ得意な光があります。「何を使うか」より先に「どんな光が必要か」を考えます。

第2章まとめ

ここで覚えてほしいのは、器具の細かな仕様ではありません。

灯体には、それぞれ得意な光がある。

そして、「何を使うか」より先に、「どんな光が必要なのか」を考える。これが照明を考えるときの基本です。

にゃかきち

灯体って、ただ光る箱じゃないんだね。

そうです。灯体の中では、光源から出た光を反射させたり、レンズで整えたり、広がりを調整したりして、舞台に必要な光へ変えています。

次は、その「灯体の中」を実際に見てみましょう。