HATAKITI 演劇の教科書|演技をする|第一部 体
第5章 姿勢
身体の「形」と「構え」を知り、姿勢を使って人物の印象や関係を表現できるようにします。
5-1 立つとはどういうことか
まず、立つことそのものを身体で理解します。
立つことは、ただ足で床に立っていることではありません。足裏で床を感じ、身体を支え、余分な力を使わずに立てることが大切です。
胸を張って身体を固めればよいわけでもありません。自然に立ったとき、自分の身体がどこで床を感じ、どこで支えているのかを確かめてみましょう。
立っている身体を感じる
- 足を自然な幅にして立つ。
- 足裏が床のどこに触れているか感じる。
- 肩や首に余分な力が入っていないか確かめる。
- 一度力を抜き、もう一度自然に立つ。


立ってるだけでも、身体っていろいろ感じてるんだね。
5-2 姿勢を観察する
姿勢を変える前に、まず今の自分の姿勢を知ります。
普段の姿勢には、自分では気づきにくい癖があります。頭が前に出ている、肩が上がっている、背中が丸くなっている、身体が左右どちらかに傾いているなど、人によって違います。
大切なのは、最初から正しい姿勢に直すことではありません。まず「今、自分はどんな姿勢なのか」を観察できるようになることです。
自分の姿勢を観察する
- 自然に立ち、正面から見た自分を想像する。
- 頭、肩、胸、骨盤、脚の位置を感じる。
- 横から見たときに身体がどうなっているか想像する。
- 無理に直さず、今の姿勢の特徴を覚える。


自分では普通だと思ってる姿勢にも、癖があるんだね。
5-3 身体の軸を感じる
身体を固めるのではなく、動ける状態で身体のつながりを感じます。
頭、胸、骨盤、足などの位置を感じながら、身体がどちらかに偏っていないか観察してみます。
ここでいう「軸」は、一本の棒のように身体を固めることではありません。動ける状態のまま、身体がどうつながっているのかを感じるためのものです。
第7章では重心を詳しく扱います。この章では、まず姿勢を支える身体のつながりに意識を向けます。
軸を感じてみる
- 自然に立ち、頭から足まで身体を意識する。
- 頭、胸、骨盤がどの位置にあるか感じる。
- 身体を固めず、小さく動いてみる。
- 動いても身体のつながりが保たれているか感じる。

5-4 姿勢を変えると何が変わるか
姿勢を変えるだけでも、同じ人の見え方は変わります。
胸を開く、背中を丸める、顎を引く、顔を上げる、身体を小さくする、身体を大きくする。こうした姿勢の違いによって、相手から見た印象も変わります。
ここでは「老人はこう立つ」「子どもはこう立つ」といった決まった型を覚えるのではなく、姿勢が変わることで自分がどう見えるかを体験してみます。
姿勢だけを変えて比べる
- 自然な姿勢で立つ。
- 身体を大きく開いてみる。
- 身体を小さく閉じてみる。
- 同じ場所に立ったまま、見え方の違いを比べる。


姿勢を変えるだけで、同じ人なのに違って見えるんだね。
5-5 姿勢で人物を表現する
姿勢を使って、人物の状態や相手との関係を表現します。
姿勢は、人物が今どんな状態なのか、相手とどんな距離にいるのかを伝える手がかりになります。
例えば、同じ「どうしたの?」という台詞でも、身体を開いて相手に近づくのか、身体を閉じて距離を取るのかで、見える人物は変わります。
声や表情を大きく変えなくても、姿勢だけで人物の印象や相手との関係を変えられることを体験してみましょう。
同じ台詞を姿勢だけで変える
- 「どうしたの?」という台詞を普通の姿勢で言う。
- 身体を開いた姿勢で言う。
- 身体を閉じた姿勢で言う。
- 相手との距離を意識して姿勢を変える。
- 声や表情を大きく変えず、見え方の違いを比べる。


台詞が同じでも、身体の構えで相手への気持ちまで見えてくるんだね。
5-6 姿勢を保つ・崩す
姿勢を作るだけでなく、演技の中で保ったり変化させたりします。
舞台では、一瞬だけ姿勢を作って終わりではありません。歩いたり台詞を話したりしても、その人物らしい身体の状態を保つことがあります。
反対に、人物の状態が変われば、姿勢を少しずつ崩していくこともできます。自信のある人物が徐々に身体を小さくする、緊張していた人物が少しずつ身体を開いていく、といった変化です。
姿勢を保つ・変化させる
- 人物の姿勢を一つ決める。
- その姿勢を保ったまま、数歩歩く。
- 同じ姿勢の特徴を残したまま台詞を言う。
- 場面の変化に合わせて、少しずつ姿勢を崩す。
- どの瞬間に人物の印象が変わったか確認する。

実践エチュード
姿勢だけを変えて、同じ台詞から違う人物を作ってみます。
姿勢だけで人物を変える 10分
- 「どうしたの?」という短い台詞を用意する。
- 普通の姿勢で一度演じる。
- 身体を開いた姿勢で演じる。
- 身体を閉じた姿勢で演じる。
- 前へ向かう姿勢、後ろへ引く姿勢など、さらに2種類試す。
- 声や表情を大きく変えず、姿勢だけで人物の印象を変える。
- 最後に、自分がどの姿勢でどんな人物に見えたか振り返る。
ポイント:大きく動くことが目的ではありません。姿勢の小さな違いが、人物の状態や相手との関係をどう変えて見せるのかを感じてみましょう。

姿勢だけでも、人物ってこんなに変わって見えるんだ!
第5章まとめ
立つ → 姿勢を観察する → 軸を感じる → 姿勢を変える → 人物につなげる → 保つ・崩す。
姿勢は、身体の形を整えるためだけのものではありません。自分の身体を知り、その状態を意識して変えることで、人物の印象や相手との関係まで表現できるようになります。