HATAKITI 演劇の教科書|演技をする|第一部 体
第6章 歩き方
歩くことを観察し、速度や歩幅、方向、身体の質を変えながら、歩きを演技の材料にします。
6-1 まず、自分の歩き方を知る
歩くことを意識して、自分の普段の歩き方を観察します。
歩くことは、普段ほとんど意識せずに行っている動作です。だからこそ、演技に使う前に、自分がどのように歩いているのかを知ることから始めます。
歩く速さ、歩幅、足の運び方、腕の動き、視線、身体の向き、歩き始め方、止まり方。人によって、さまざまな癖があります。
ここでは「正しい歩き方」を作ることが目的ではありません。まず、自分にはどんな歩き方の特徴があるのかを知ることが大切です。
自分の歩き方を観察する
- 普段どおりに歩く。
- 少しゆっくり歩いてみる。
- 歩幅や腕の動きを意識する。
- もう一度、何も意識せず歩く。
- 最初の歩き方との違いを感じる。


普通に歩いてるつもりでも、いろんな癖があるんだね。
6-2 速度を変える
歩く速さが変わると、身体の使い方も変わります。
まず、ゆっくり、普通、速いという三つの速度で歩いてみます。
速く歩くときは、ただ足を速く動かすだけではありません。呼吸、視線、腕の動き、歩幅など、身体全体の使い方も変わってきます。
「速い=急いでいる人」と決めつける必要はありません。まずは、速度が変わると自分の身体がどう変化するのかを感じてみましょう。
速度だけを変えて歩く
- 普通の速度で歩く。
- 半分くらいの速度で歩く。
- 普通の速度に戻る。
- 少し速く歩く。
- 速度を変えたとき、身体のどこが変わったか確認する。


速く歩くと、足だけじゃなくて身体全体が変わるんだね。
6-3 歩幅を変える
歩幅を変えると、同じ人の歩き方でも見え方が変わります。
同じ速度で歩いていても、歩幅が違えば身体の動きは変わります。小さな歩幅、普段の歩幅、大きな歩幅を順番に試してみましょう。
さらに、歩いている途中で歩幅を変えてみます。歩幅が変わった瞬間に、自分の身体の使い方や見え方がどう変化したかを感じます。
大きな歩幅だから元気、小さな歩幅だから弱い、と決めつける必要はありません。歩幅を変えたことで何が変わったのかを観察することが目的です。
歩幅だけを変えて歩く
- 普段の歩幅で歩く。
- 歩幅を小さくする。
- 普段の歩幅に戻す。
- 歩幅を大きくする。
- 途中で歩幅を変えてみる。
- 見ている人からどう見えたか確認する。


同じ速さでも、歩幅が違うと歩き方そのものが違って見えるね。
6-4 方向と向きを変える
どこへ向かうのかによって、歩く身体の使い方も変わります。
歩くということは、ただ前へ進むことではありません。舞台では、どこへ向かうのか、誰に近づくのか、誰から離れるのかという方向そのものが、人物の状態を見せることがあります。
まっすぐ歩く、曲がる、途中で方向を変える、誰かへ向かう、誰かから離れる。いろいろな方向へ歩きながら、身体の向きや視線がどう変わるかを感じてみます。
ここではまだ人物の演技を作り込む必要はありません。まず、方向を変えると自分の身体の使い方がどう変わるかを知ります。
方向を変えて歩く
- 舞台をまっすぐ歩く。
- 途中で90度方向を変える。
- 急に方向を変える。
- 誰かに向かって歩く。
- 誰かから離れるように歩く。

6-5 身体の質を変える
身体の状態を変えると、自然に歩き方も変化します。
歩き方を変えるとき、足の動きだけを変える必要はありません。身体全体の状態を変えることで、歩き方も変わります。
軽く、重く、硬く、柔らかく、疲れて、急いで、周囲を警戒して。さまざまな状態を想像しながら歩いてみます。
これらを「演技の型」として覚えるのではありません。身体の状態が変わることで、歩き方が変わり、見え方も変わるという関係を体験します。
身体の質を変えて歩く
- 普通に歩く。
- 身体を軽く感じて歩く。
- 身体を重く感じて歩く。
- 身体を硬くして歩く。
- 身体を柔らかくして歩く。
- 自分で一つ状態を決めて歩く。


足の動かし方を変えなくても、身体の感じ方で歩き方が変わるんだね。
6-6 歩き方で人物をつくる
ここまで変えてきた歩き方を、人物の状態や目的につなげます。
歩く速さ、歩幅、方向、身体の質。ここまでに試したものを組み合わせると、歩き方から人物を作ることができます。
例えば「待ち合わせ場所へ向かっている」という同じ状況でも、楽しみにしているのか、遅刻しそうなのか、不安なのか、相手に会いたくないのかによって、身体の状態は変わります。
大切なのは、「この人物はこう歩く」と型を決めることではありません。人物の目的や状態から身体を変え、その結果として歩き方が変わっていくことです。
歩き方から人物をつくる
- 普通に舞台を横切る。
- 速度を変える。
- 歩幅を変える。
- 方向を変える。
- 身体の質を変える。
- 「誰かに会いに行く」など、目的を一つ設定する。
- 目的を持って舞台を横切る。
- 見る側は、どんな人物や状態に見えたか伝える。
- 演じた側は、自分の意図と見え方を比べる。


歩き方だけでも、その人がどんな状態なのか伝わるんだね。
実践エチュード
ここまでの歩き方を組み合わせて、歩くことから人物を作ってみます。
歩いて人物をつくる 10分
- 普通に歩く。
- 速度を変える。
- 歩幅を変える。
- 方向を変える。
- 身体の質を変える。
- 人物の目的を一つ設定する。
- 目的を持って舞台を横切る。
- 見る側は「どう見えたか」を伝える。
- 演じた側は「何を意図したか」を伝える。
ポイント:大きく変えることが目的ではありません。小さな歩き方の違いから、人物の状態や目的がどう見えるのかを感じてみましょう。

歩くことを変えるだけで、人物まで変わって見えるんだ!
第6章まとめ
自分の歩きを知る → 速度を変える → 歩幅を変える → 方向を変える → 身体の質を変える → 人物につなげる。
歩き方は、ただ舞台上を移動するための動作ではありません。自分の身体を観察し、歩く速さや歩幅、方向、身体の状態を変えることで、人物の目的や状態を表現することができます。